閉鎖病棟に入院していた頃、私は毎日毎日プールへ通っていた。
帰棟時刻は16:00。
最後に決まってバタフライを泳いだ。
私は四泳法、泳げるのである(クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライ)。
ターンの都度、隠部が鬼のように痛んだ。
その度に幻影を思い出して、私は振り払うようにして水をかいた。そう。あれは幻影。幻想だ。
儚いゆめ。
なかったことにしたひとたち。
全員藻屑と消えた。水のなかではすべてが夢だった。
消し去って、一掃して、帰りはとても気分がよかった。いや、そんなはずがない。
ナースも療法士も、みな優しかった。いいひとたちだった。
しかし男性は居た。「彼ら」に似ていた。脳内で凄惨に殺して朝になる。
またプールへ行く。
繰り返し。
殺し方はどんどん、バリエーション豊かになっていった。
よかった。まだ強くなれる。私はどんどん強くなれる。
バタフライ!